夕方に受信箱を見ると、返していないメールが何通も残っている。どれも五分あれば書けるはずのものなのに、朝から手をつけられないまま日が暮れている。そういう話を、よく聞きます。返信の下書きはAIに作らせればいい、と勧められたことのある方もいるでしょう。ただ、メールは相手のある書きものですから、どこまで任せてよいのかが決まらないまま渡すのは、落ち着かないものです。ここでは、任せる範囲をどう決めるかを、日々届くメールに沿って考えます。
返信が遅れるのは、打つ速さのせいではない
一通の返信を打ち込む時間は、たいてい数分です。それでも夕方まで残っているのは、打つのが遅いからではありません。
画面を開いて、相手の文面を読み返し、前にどう答えたかを思い出し、受けるのか断るのか、いくらで受けるのかを考える。書き出しの一行が決まらないまま、いったん閉じる。返信が滞っている時間の多くは、この書き始める前のところに消えています。ですから、打ち込みを速くする工夫をいくら足しても、あまり変わりません。効くとすれば、白い画面に最初の一行を置いてくれるほうです。一行目さえ出てしまえば、あとは直しながら書き進められます。
届いたメールを、三つに分けてみる
任せる範囲を決めるには、届くメールをひとまとめに見ないことです。一週間分を思い返すと、だいたい三つに分かれます。
ひとつめは、日程の候補を返す、頼まれた資料を送る、確かに受け取りましたと伝える、といった中身がほぼ決まっているもの。ふたつめは、見積の問い合わせや納期の相談のように、調べたり決めたりする中身はあるけれど、文面の運びは毎回似ているもの。三つめは、値引きの相談、苦情、断り、初めての相手への挨拶といった、一通で相手との関係が変わりうるものです。
任せて楽になったと感じやすいのは、はじめの二つです。三つめまで下書きを丸ごと頼むと、当たり障りのない文面が出てきて、それを直すほうに時間がかかります。書き出しの一行だけ案をもらって、あとは自分の言葉で組み立てるくらいが落ち着きます。
任せるのは下書きまでにする
範囲の引き方は、二本の線で足ります。ひとつは、送るのを決めるのは必ず人だという線。もうひとつは、判断の中身は先に自分で決めておくという線です。
AIは、前回この相手にいくらで請けたかも、いま職人の手がどこまで空いているかも、この相手にどこまで踏み込んでよいかも知りません。ですから、金額と日付、受けるか断るかは自分で決めて、その決めた中身を渡します。「二十八日なら伺えます、金額は前回と同じ、と伝わる文面にしてください」と頼めば、返ってくるのは言葉の運びだけです。
任せているのは、考えることではなく、言葉に整えるところ。ここが混ざると、出てきた下書きが当てにならなくなります。
一種類だけ決めて、一週間ためす
すべての返信を一度に変える必要はありません。三つに分けたうちのひとつめから、さらに一種類だけ選ぶのが楽です。日程調整の返事だけ、資料を送るときの添え状だけ、というように決めて、一週間続けてみる。
頼むときは、これまで自分が同じ場面で送った返信を二、三通そのまま見せて、「この書き方に合わせてください」と添えます。何も見せずに頼むと、自社では使わない硬い言い回しが混じり、直す手間で帳消しになります。一週間やってみて、送る前の直しが二、三か所で済むようなら、次の一種類に広げればいいですし、毎回ほとんど書き直すことになるなら、その種類は自分で書いたほうが速い、というだけの話です。
迷ったら
どの返信を任せてよいかは、商いの中身と、相手との付き合い方によって変わります。同じ問い合わせでも、初めての相手か長い付き合いかで、答えは違ってきます。
御社に一日どんなメールが届いていて、どれに手が止まっているのか、何通か聞かせていただければ、任せてよさそうな一種類はどれか、それとも今のまま自分で書くほうが確かか、一緒に考えます。
ご相談は初回無料です。何から手をつけるか決まっていない段階でもかまいません。
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